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環境活動家テンダー、ひょんなことからエコミットに協力するの巻


2020年07月11日

fablabダイナミックラボテンダー南さつま

みなさんはじめまして。私は鹿児島県南さつま市にて、ダイナミックラボというfablab(3Dプリンタやら工作機材やらが置いてある市民工房)を運営している、環境活動家のテンダーと申します。

ダイナミックラボは「資源が枯渇した以後の時代を生きるための技術群アーカイブを作る」ことを目的とし、プラゴミやアルミゴミから有価物を作る活動をしています。

なぜなら私たちは、すでに地球の地下資源を随分使ってしまったので、今後は潤沢にヴァージンマテリアル(リサイクルを経ていない材料)を使えない時代が来るだろうし、その時代が来てから、残されたゴミや壊れた機器類から文明を築くのは大変な作業だろうと思うからです。

また、ヴァージンマテリアルを使えない次の世代のために、残されたもので暮らしていくための技術群を残し伝承することは、せめてもの、もはや物資を潤沢に残せない先人の役割だとも思うのです。

そのためにダイナミックラボでは金属加工や3D設計、パーマカルチャーや先住民技術の修練・実践を柱とし、最近ではプラゴミを破砕する個人向けのシュレッダーを開発しました。(これは、破砕したプラペレットから、さらに新しいものを作るための機械です)

ダイナミックラボ開発のプラゴミシュレッダー。家庭で使いやすいように小型化・100V電源対応してある

今日は不思議なご縁で、これからのエコミットに関わることとなった私の、これまでの経緯と、これからの視座をここに書き留めます。

ダイナミックラボは非営利の一般社団法人その辺のもので生きるが運営し、理事にはエコミット取締役の永山由高さんも名を連ねています。
そんなご縁からエコミットの名前は知っていたけれど、うちは非営利法人だし、深く関わることもないだろう、と思っていたのがつい2ヶ月前。

エコミットとテンダー

過日。

ダイナミックラボで製作している、プラゴミ破砕機のためのモーターを何の気なしにヤフオクで探していたところ、珍しくちょうどいいモーターを発見。

正確にはモーターのついている機械(ねじ切り機)

おっ!と思い出品者の詳細を見てさらにびっくり。

出品地域がなんと 「鹿児島県 薩摩川内市」(関東圏の人にはわかるまいが、鹿児島に住んでて鹿児島の出品者からちょうどいいものを買えることなんて滅多にない)だったのでした。

薩摩川内の中古機械・・・?

なんか聞いたことあるぞ、と思ってリンクを辿れば、なんとエコミットの出品だったのが事の発端

薩摩川内市ベンチャー企業の雄、エコミット 

重いものをオークションで買えば送料も馬鹿にならないので、取りに行ける距離はとてもありがたい。

落札後に連絡を取り、軽トラでエコミットに向かいモーターを無事回収。ついでに倉庫を物色させてもらい、そこで3度目のびっくり。

ここには胸熱なジャンク機械がたくさんあるではないか!

私は金属加工と物の修理が得意なので、エコミットの倉庫はまさに宝の山。

どれくらい手を入れればどれくらいの値段でも売れるか、という見当が私にはつくけれど、どうやらその日のエコミットの社員さんがたには、機材類の「鉄の重量」や「見た目の綺麗さ」でしか価値を把握できていない様子でした。

見た目の良くないものは、まだ動いたとしても通電させずに雨ざらしで、ジャンクのまま海外に売るのだそうな。

おお、なんともったいない。でも他所様の会社だし、そこまで突っ込んで言うこともないなぁ、と思いながら、せっせと自分のめぼしいものを買い付けし、

山盛り購入の図

ダイナミックラボにて新品同様までレストアして、便利に使い倒している昨今です。

その詳細はこちら↓

(ちなみにこのボール盤、多分新品だと10万円クラスだと思う)

どうだいいだろう。


数日後、ダイナミックラボ理事の永山さんに

「エコミット行ったよ。いっぱい買ったよー」
「ジャンクで買ったの直したよー」

と伝えたところ、私の預かり知らぬところでこの話が大きく展開し、ほどなく永山さんより電話がかかる。

永山さんいわく、

エコミットとしても流通だけでなく、中古機械を直す方向性の事業を深めたい。つきましては意見を聞きたい」とのこと。

おお、なんと!(ジャンクは買って直すもんだなあ)

というわけであれよあれよと2回目のエコミット来訪が決まり(買い付けも兼ねるので、交通手段はもちろん軽トラだ)、同世代の川野社長とお話しすることになったのでした。

社長、お主、、、できるな!

ワイワイガヤガヤ

まずは倉庫を案内してもらい、

それからしばし、川野さんとお話をば。

お話して気づいたのは、川野さんが廃品を回収することを「レスキュー」と呼ぶこと。

あー、この人がやっていることは廃品回収業ではなく、物の継承なのだな、と私は思いました。

ちなみに私は、お金のなさそうな行政(←失礼)から講演依頼を受けたときに

ゴミの処分場を物色させてもらえるなら、それをギャラ扱いで!」と、

申し出ることがあります。

2018年、沖永良部島のクリーンセンターで、役場の人と「レスキュー」して盛り上がっている様子

私からしたら処分場に1〜2時間の滞在をすれば数万円分は回収できるので、公共のよくわからない規定で支給されるちょびっとの額をもらうよりも、むしろお互い得、ということが起きるのです。

その話を川野さんにしたら、なんとも嬉しそうに「僕とおんなじだ!」と言ってました。

ムムム、、、お主できるな!

というわけで和やかに、川野さんのこれからのヴィジョンを伺うにつれ、なんとも言えない感慨が私の中に沸き起こったのでした。

生きていると、こんな日も来るのか。

話を聞くにつれ、恐縮ではあるけれど私は自分のもうひとつの可能性に想いを馳せないわけにはいかないのでした。

環境のためにビジネスを諦めた自分と、環境のためにビジネスを続けた川野さんと

率直に、私が非営利の一般社団法人をしているのは、ビジネスができなかったから。

どう頑張っても、お金を稼ぐことに一生懸命になれなかったのです。
(私は鹿児島の山中で、電気水道ガスのシステムを自作し、家族5人で年間家賃1万円の家に住んでいます=お金があまり必要ない)

ビジネスにすることで活動が広がるのもわかる。
今の日本社会の主流が資本主義だということもわかる。
お金に説得力があるのもわかる。

ただ、自分はビジネスに心血を注ぐことができなかった。いくら目をこらしても、お金自体にリアリティのある価値を見出せなかったので、自分の時間(=命。時間とは命そのものだ)を注ごうと思えなかった。

また、雇用をするといった形で誰かを束ねることも、自分にはできなかった。
「人に給料を払うという一連」の難易度が高すぎた(一年やってみてとても後悔した)。

ああ、苦い思い出。


ただ確実に、
私も川野さんのようなビジネスを目指し、やろうとしていた時期がある。

もしビジネスの力にコミットすることができたら、より大きな規模で私は環境問題に関わることができただろう。

しかしうまくいかず結果的に「外注せずに自分でやる、タフネスを身に付ける」という方向に、私は舵を切ったのでした。その結果、ビジネスに注力するエネルギーを自分の技術向上と環境活動に注いだので、

例えば金属加工と溶接を学ぶところから始めて機械を設計し、プラゴミシュレッダーを作れるようになったり(ちなみに私は音楽大学卒)、

アルミ缶を拾ってきて溶かして金型を作り、さらにそこにプラゴミを溶かして流し込み、モノを量産する、といったことができるようになったのだと思う。

アルミ缶やアルミサッシを溶かして作った金型と、プラゴミを破砕して射出成型して作ったクリップ

私はビジネスに傾かなかったので、自分の挑戦として、幅広い分野に尖った取り組みで介入することができた。
そしてそれに満足すらしていた。

この日、川野さんと話すまでは。


川野さんの話を聞きながら「もし自分がビジネスの道を選べていたら、同じようなことをしたかった」と思い、私は何度も頷きました。

まさに、自分が「もし人生で違う選択をしていたら…」の実例に相対した、そんな気持ちだったのです。

そして、いろんな思いが胸に去来するのを味わいながらも、今自分が個人の技術とタフネスに特化していることと、今日川野さんに会えたことを嬉しく思いました。

なぜなら、同じ目的に向かう他の道を深めた人が目の前にいるのであれば、これから一緒にやれることが必ずある、と強く思ったからです。

鹿児島に「継承の港」を作る

川野さんは言いました。

「これから取り組むエコベースというプロジェクトでは、この倉庫を拠点に木材から機械までを揃えたリユース品のホームセンターを作るつもりです。」

私は、それはこれからの世界に必要な態度だ、と思いました。

なぜなら多くの人にとって、一度も見たことがないものは、ないことになってしまうから。

少なくとも私は、材料まで取り揃えるリユース品専門のホームセンターをこれまでに見たことがありません。

ちなみに鹿児島や九州の地方都市では、暮らしに必要なものの大多数をホームセンターで揃えることは珍しい光景ではないので、例えば子供の頃から親とホームセンターに通い続け、大人になっても習慣的に足が向く、という人も多いことでしょう。

その時に、たまたま最寄りのホームセンターがリユース品専門だったら、どうなるでしょうか。

仮に強いポリシーがなかったとしても、リユース品を買う、という選択が人の初期設定となる、ということもあり得るのです。

その時にリユース品を買うことが当たり前であればあるほど、

貧乏だから / ケチだからリユース品を買うのではなく、世代を超えて地球上を旅するモノを、一時的に自分が継承するために買う、という視座の文化を作ることもできるのでは、と私は思ったのでした。

だから、私は勝手にエコベースのこれからの取り組みを、「継承の港」と呼ぶことにしました。


おそらく私たちは愚かさゆえに、数世代先の分までの商品をすでに生産し終えています。

消費し切れないほどの膨大な商品たちはどうなるのでしょうか。これまでは無闇に廃棄されるだけでした。

そもそも無駄な生産は避けられれば良かったのですが、どうにも私たちは賢くなかったので、大量のモノがすでに生産済みで目の前に山積しているわけです。それならばどうすれば最も無駄が減るのでしょうか。

とても単純で、簡単なことです。

継承して、次に必要な人や状況が現れるまで待てば良い

ただそれだけだと私は思います。
(都市と違って、保管のために必要な土地が、鹿児島ではべらぼうに安いのだから!)

エコベースが担う継承のための港は時間を超えて、資源、モノ、環境を次世代に引き継ぐための場所となるでしょう。

このチャレンジは遠いどこかへ行く船出ではなく、同じ場所でかけがえのない未来がやってくるのを待つ古く・新しい船出なのです。

ここでは継承という視座が文化的な価値をモノに足して、大量生産品ですらオンリーワンへと意味を変えるのかもしれません。

2回目の買い付けで買ったものの一部。大量生産品であることは間違いないが、私にとってはすでに没個性な「モノ」ではない。
なぜだろうか?

流通業から継承業へ。

このエコベースの始まりが、ヴァージンマテリアルからの独立宣言であり、四半期ごとに帳簿とにらめっこすることが目的となってしまうような、短い視座からの脱却であることを私は願います。

エコベースが求めるのは消費者ではなく継承者です。

ゆえにこれからもエコベースが「レスキュー」を続けるのであれば、リメイクやリユース、レストア(修理)の技術を人々に提供する基地(継承の港ならばドック、と呼ぶのがふさわしいかも)としても機能することになるでしょう。

薄汚れていたプラのおもちゃも、プラスチック復活剤で磨けばすぐに色が深まり長持ちする。
私が実演した時、エコミット 倉庫の面々は驚いていた。
ものを長持ちさせるためには必ずしも特殊な技術が必要なわけではない。

私は、そういうことであればぜひ協力したい。個人として深めた技術や見識を、大きな流れに合流させたい。

まだほとんどの人は気付いていないかもしれないけど、環境を継承し文化の質をぐっと底上げするビジネスが、鹿児島から産まれようとしています。

さあ、船出の時は、もうすぐです。 

継承を誇り高い文化へと変えるさざ波は、あなたの足元まで打ち寄せています。




テンダー

環境活動家。鹿児島県南さつま市在住。

人の行動を規定するのはソフトウェアではなくハードウェアだ、という考えから「心から望んで行動を変えてもらう」ための道具を、廃品や鉄や3Dプリント品で作っています。

自ら出版者となり発行した著書「わがや電力 12からとりかかる太陽光発電の入門書」は直販で11000部を売り上げ。ダイナミックラボ代表理事
https://sonohen.life/


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特別寄稿

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「未来につながる働き方」「未来をつくるプロジェクト」「未来をいきる組織づくり」についてお届けするC-LOG。ここでは様々なフィールドでご活躍されている皆様に執筆いただいた原稿を「特別寄稿」として掲載していきます。

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